院長コラム リンガルとともに33年

スクエアスロットへの道|2000年代編
 ワイヤーとスロット間の隙間(あそびの部分)を、常に一定のサイズにする―というコンセプトから、パッシブセルフライゲーションブラケットが生まれました。
 しかし、それでもまだ、私は満足できず、さらに改良する点を探っていました。STb-SL、ALIASではスロットの密度にこだわり、あえてミリング(高精度に研磨する手法)で削り出しをしています。従来のメタルインジェクションモールディング(金属粉末射出形成法)では、わずかながらスロットのサイズに狂いが生じることがあるからです。
 なおかつ、STb-SLで初めてスロットをスクエア(正方形)にするという発想を具体化しました。
 これまで、すべてのブラケットのスロットの形はレクトアンギュラースロットといって、長方形でした。ラウンド(円型)ワイヤー、スクエアワイヤー、レクトアンギュラー(長方形)ワイヤーを使い、「トルクを効かせ(回転モーメント)歯をコントロールする」という流れのなかで、レクトアンギュラースロットが生まれ、踏襲されてきたのだと思います。平たい溝のほうが、トルクが効くという考えがあった為、スロットの大きさを変えるという発想には至らなかったのでしょう。
 しかし、私はスロットのあそびをなくし、常に一定のサイズにするという考え方を突き詰めていくことで、正方形の溝のほうが長方形よりもメリットがあることに気が付きました。
 レクトアンギュラースロットの場合は、スロットと同じサイズのワイヤーを入れる事は困難を極めます。ワイヤーが長方形の為、垂直側と水平側で8-10倍ほど矯正力に違いが生じ、スロットに入れる際、硬すぎて入らないのです。
 その点、スクエアスロットの場合は、垂直側も水平側もその矯正力は同等でどちらかが極端に強くなるということがないので、フルサイズのワイヤーを入れられるのです。フルサイズということは、スロットの大きさに対して、ほぼ同じサイズのワイヤーであり、あそびがない分、トルクがよく効きます。
 長方形のスロットの場合は、少し細いアーチワイヤーを用いることで、わざとあそびを作り、矯正力を弱めて治療します。しかし、あそびがある分、トルクの効きがよくないため、あらかじめブラケット自体に角度をつけた、ハイプロファイルのブラケット(大きいブラケット)を用いて調整をするといった複雑な事をしなければなりません。
 一方のスクエアスロットでは、フルサイズのワイヤーが使えるため、トルクは計算通り動き、予め多めにつける必要がないのです。
 それは、最初にラウンドワイヤーでレベリングしていく際にも言える事で、スクエアスロットでは垂直面と水平面のあそびが同じになる為、ティッピング(歯の傾き)もローテーション(歯のねじれ)も簡単に治す事が出来るのです。
 スクエアスロットでは、ワイヤー交換も3回ほどで終わる場合も少なくありません。抜歯のケースなどはもう少し多くなることもありますが、いずれにしろ、フルサイズのワイヤーを入れるという事は、すべての歯に同時にトルクがかかるという事なので、トルクもレベリングも早い時期に完了するメリットがあります。
 スクエアスロットはフルサイズのワイヤーで治療する事が出来る唯一の装置であり、このことが矯正治療を今後、大きく飛躍させることになると確信しています。  

 
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